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2014-10-12

喪失

勤務先の老人ホームで、担当していたフロアの入居者A様が、先日ご逝去された。本当に、本当に突然のことで、最初にきいたときは何かの間違いかと思ったし、しばらくは全く信じることが出来なかった。しかし、その日は別のフロアでの勤務だった私が連絡をうけてA様の部屋に行くと、そこにはいつもいるはずのA様の姿はなく、布団がきれいにたたまれているだけだった。

その日のうちに救急搬送先の病院からご遺体が運ばれて来て、青白く冷たくなったA様を目の当たりにして、初めてその現実と直面した。それから数日間、彼女とのたくさんの想い出を思い返すたび、ずっと涙がとまらなかった。

彼女の旅立ちは、なんの兆候や前触れもなく、まさかあのA様がこんな早くに、ということを誰もが口にした。突然意識がなくなったという亡くなった日も、その数分前まで普段通りリビングに出てきてお茶を飲んで、スタッフと会話をしていたというのだから。リビングで発作がおこった時、彼女は長年慣れ親しんで来たスタッフや他の入居者に囲まれていたという。すぐに異変に気づいて、スタッフや看護師が最善を尽くした上での結果だったという。変な言い方かもしれないが、最高に幸せな逝き方だっただろう。苦しんだとしても、その時間もほんのわずかで、孤独でなくみんなに見守られながら、彼女は安らかに天国へと旅立っていった。

親戚を亡くしたことがない私にとって、彼女の死は本当に大きな衝撃だった。血のつながりはないにしても、生まれて初めて親しい人を亡くした感覚だった。仕事に出勤するたび、毎日のように顔を合わせていて、当たり前のように彼女は毎日そこで生活を送っていた。そして仕事柄、お風呂も食事も排泄も就寝や起床の支度も入眠中も、彼女の全てに関わっていた。そしておまけに私は彼女の居室担当という役割で、彼女に関するケアの責任を受けもつ担当をしていた。そのため、食事の時に必要なエプロンや食器、下着類の手配なども行っていた。ほんの1ヶ月くらい前にエプロンや食器を新調したのだが、彼女はどんな色が似合うか、どんな柄なら喜んでくれるだろうか、どんな形なら使いやすいだろうかと、私なりに悩んで買ってきたものだった。

1年半。
私が入職した時に彼女と初めて出会ってから、亡くなる日まで一緒に過ごした時間。
たかがそんなもんかと思うかもしれないが、ほぼ毎日のように会っていたし、本当にたくさんの、数えきれないほどの想い出ができるのに、十分すぎる時間だった。クリスマスもお正月も、節分もひな祭りも、七夕もホームの10周年の記念日も、休みだった日以外は1年の全ての行事を共に経験した。毎日ベッドから声をかけて起きてもらって、赤いメガネを差し出して、杖をついて歩いていくのをリビングまで見守って、イスに座ったらお茶を出す。認知症が進行していたから、会話があまり噛み合なかったり、気難しかったりしたけど、だからこそA様が微笑んでくださると本当に嬉しくて、優しい気持ちになった。たまにおどけてみせてくれたり、歩いている時に踊ってみせてくれたり、体操も自分なりに体を動かしてくださるのが、すごく微笑ましくて可愛いらしかった。


A様が旅立ってから、ホームのスタッフで私は誰よりもボロ泣きしていた。明らかにご家族の方よりも感情を表に出していて、周りから変な目で見られるほど、本当に恥ずかしい未熟者だった。今回でもこんな状態だから、自分の家族だったらと考えたら、もうどうなってしまうか分からない。

居室担当の最後の仕事として、居室の整理をした。毎日のように手渡していた杖や着ていた衣類、色々な表情のつまった写真。生活していた時のものはそっくりそのままの状態なのに、本人だけがいない、抜け殻みたいな部屋だった。そうした物品も、告別式が終わったらご家族が全て持って返られ、すっかり何もなくなった。こうしてキレイにものがなくなってしまうと、本人がここにいたという証拠がなくなってしまうようで、またこの気持ちや想い出を決して忘れたくはないと思いつつも、だんだんと薄れていってしまうのかと思うと、本当に寂しい。


そんなこと、生きてる時はとりたてて考えることもなかったけど、
私はA様のことが大好きだった。亡くなってから、それが本当に身にしみて分かった。

それだけ私の中で、A様は大きな存在だったんだと。無くした喪失感の大きさで、どれだけ大切な人やものだったかをはかるなんて、ある意味皮肉な話だけど、少なくとも私は、人の死でこんな大きな喪失感を感じたのは生まれて初めてだった。


本当に、たくさんの素敵な想い出を、ありがとうございました。
心より、ご冥福をお祈りいたします。

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プロフィール

神楽サティ

Author:神楽サティ
神楽サティ(かぐらさてぃ)と申します。
シンガーソングライターの端くれをしています。R&B、Rock、歌謡曲などを含んだ「ポップス」を目指して、現在ライブハウスで活動中。主に気まぐれなつぶやきですが、よかったらのぞいていって下さい。

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